地域ブランディングとは? 魅力を価値に変え、“誇れる我が地域”をつくるための戦略ガイド   

「地域の魅力をもっと伝えたい」「観光や移住につながる発信をしたい」
そう考える自治体や地域団体の方は多いのではないでしょうか。

でも実際は、ロゴやキャッチコピーを作っても効果が長続きしなかったり、
イベントやパンフレットも一時的な盛り上がりで終わってしまう──
地域ブランディングは思っている以上に“難しい”と感じることも多いはずです。

魅力はあるのに伝わらない。がんばっているのに、広がっていかない。
そんなとき必要なのは、「見せ方」ではなく、地域の魅力を“選ばれる理由”に変える根本的な設計です。

このブログでは、地域の強みをどう見つけ、どう育て、どう広げるのか──
成功事例を交えながら、ブランディングの考え方と進め方をわかりやすくまとめました。

1. 地域ブランディングとは何か?


「地域ブランディング」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
ロゴやキャッチコピー、観光キャンペーンや特産品のプロモーションなど、
いわゆる“地域のPR活動”をイメージされる方も多いかもしれません。

もちろんそれもブランディングの一部ですが、本質はもっと深いところにあります。

地域ブランディングとは、
「その地域がどんな価値を持ち、どんな印象を与える場所なのか」を明確にし、内にも外にも“共感されるカタチ”で伝えていくための戦略的な取り組みです。

言いかえるなら──
「この地域って、なんかいいよね」
「あそこには、あの魅力があるよね」
そんな、人々の“心に残る印象”を育てていくプロセスが、地域ブランディングなのです。

一時的なイベントや打ち上げ花火的な施策ではなく、地域にある価値を丁寧に見つけ、言語化し、視覚化し、体験として届けていく。そしてそれを、住民・事業者・行政が共有しながら、時間をかけて育てていく。
それが、これからの地域に必要な「ブランド」の考え方です。

2. なぜ今、地域ブランディングが求められているのか


全国どこへ行っても、同じようなチェーン店や観光施設が並ぶ時代。
便利にはなったけれど、「その土地らしさ」が感じにくくなっていると思うことはありませんか?

さらに、少子高齢化や人口減少、地域の担い手不足や産業の衰退、
インバウンド需要や移住・定住促進、SNS時代の情報過多など、
様々な社会課題が地域を取り巻いています。

こうした中で、「私たちの地域らしさは何か?」「どう伝えれば選ばれるのか?」
その答えを見つけるために、地域ブランディングが役立ちます。

では、なぜ地域ブランディングが社会課題の解決にもつながるのか。その理由を、4つの観点から整理してみましょう。

いま、人はモノを選ぶときに、価格や機能だけで判断していません。
どんな想いでつくられているのか、誰がどこでどう関わっているのか──
“共感”や“意味”のあるものが、選ばれる時代になっています。地域も同じです。
利便性やアクセスの良さだけでは、選ばれません。
「その土地らしさ」「そこにしかない価値」が、訪れる理由になっていきます。

昔の観光地づくりは、「集客」に目が向きがちでした。 でもこれからは、ただ“人が来る”だけでなく、“関わる人が増える”地域づくりが求められています。

・何度も足を運びたくなる
・誰かに紹介したくなる
・関わり続けたくなる

そのためには、地域としての“印象”や“空気感”を育てていくブランディングが必要なのです。

地域には、昔から受け継がれてきた技術や食材、風景や文化など、“本来なら価値のあるもの”がたくさんあります。
でもそれが言語化されず、伝え方も定まっていないために、知られずに終わってしまっている──。

ブランディングは、そうした「まだ知られていない価値」に光を当て、伝え方を設計することで、資源を“資産”に変えていく手段でもあります。

SNSやWebでの発信が当たり前になった今、
発信力よりも大切なのは、「中の人が本当にそれを信じているか」ということ。
どれだけ立派なキャンペーンを打っても、地元の人が白けていたら、見る人にも伝わります。
逆に、地域の人がイキイキと語っていれば、それだけで強いブランドになります。地域ブランディングは、「外に伝えるため」ではなく、「内側を整えること」から始まる
その視点が、今あらためて必要とされています。

これら4つに共通するのは、「地域の価値を再発見し、共感される形で伝えること」の重要性です。
地域ブランディングは、単なる観光PRやイベント施策ではなく、地域の未来をつくるための“価値づくり”のプロセスなのです。

次の章では、その具体的なステップを解説していきます。

3. 地域ブランディングの基本ステップ


地域ブランディングは、「良さをアピールすること」ではなく、“価値を見つけて、整理し、伝わるカタチに変えること”です。そのためには、思いつきの施策ではなく、段階的に取り組んでいく“設計図”が必要です。

企業のブランディングでは、市場や競合の分析から入ることが一般的ですが、地域ブランディングの場合は、まず“自分たちを見つめ直すこと”から始めます。
なぜなら、地域の魅力というのは、外から見て目立つものよりも、地元の人にとっては当たり前になってしまっている日常の中にこそ、価値が眠っていることが多いからです。

ここでは、そうした考え方に基づいて、地域ブランディングを実践するための基本ステップをご紹介します。

魅力の棚卸し

地域にある“らしさ”を掘り起こすことから始めます。
観光資源や名物だけでなく、風景、習慣、人の営みなど、日常の中にある“他にはないもの”に目を向けることが重要です。
「あるけど伝えていない」ものに価値が眠っていることも少なくありません。

STEP
1

価値の整理と強みの明確化

見つけた資源を「誰にとってどんな価値があるのか」という視点で整理します。
他の地域と比べたときの違いや強み、共感されやすいポイントを言語化していくプロセスです。
ここで初めて、ターゲットや立ち位置が見えてきます。

STEP
2

ブランド・コンセプトの言語化

整理した価値の中から、ブランドの核となる“コンセプト”をつくります。
「この地域が、どんな価値を持ち、どんな未来を描きたいのか」
そんな想いやストーリーを、誰もが共有できるメッセージに落とし込むことが大切です。

STEP
3

表現と発信の設計

ネーミングやロゴ、パンフレット、空間デザインなど、コンセプトを“伝わるカタチ”に変えていきます。
また、SNSやWeb、リアルな場での体験を通じて、誰にどう届けるのかという「伝え方」もここで戦略的に設計します。

STEP
4

チームづくりと継続のしくみ

ブランドは、一度つくって終わりではありません。
関係者が共通の目的意識を持ち続け、同じ方向を向いて取り組めるチームと仕組みを整えることで、地域ブランドは“続いていく力”を持ちます。

STEP
5

この5つのステップは、地域に埋もれている魅力を見つけ出し、共感される言葉と形に変えるための流れです。
ここから、“うちの地域はこれだ”と自信を持って語れるブランドが育っていきます。

4. 成功する地域ブランドの共通点


地域ブランディングは、「設計すること」と「育てていくこと」の両方が必要です。
理論どおりに進めても、なぜかうまくいかない。
一方で、派手なPRをしていなくても、じわじわとファンを増やしている地域もあります。

その違いは何か?
成功している地域ブランドには、共通する“強さの理由”があります。
ここでは、実際の成功事例も交えながら、そのポイントを探っていきましょう。

① 一貫した世界観がある

ネーミングやロゴだけでなく、SNSの投稿、パンフレットの言葉づかい、現地での体験や接客まで──
どこを切り取っても「その地域らしさ」が滲み出ていることが、強いブランドをつくります。

  • たとえば、長野県小布施町は
    「栗と文化の町」というテーマを軸に、街全体のデザインやルールが統一されています。訪れた人が“なんとなく心地よい”と感じるのは、こうした世界観の一貫性によるものです。

② 関係者に“当事者意識”がある

成功している地域ブランドには、役場や観光協会だけでなく、地元の宿や商店、農家など、関係者が「これは自分たちの取り組み」として関わっています。
これは企業でいうインナーブランディングにも近い状態。情報共有だけでなく、語れる・誇れる・協力したくなるという意識が、ブランドを支えています。

  • たとえば、徳島県上勝町の「いろどり」は、
    高齢者が主役となり、葉っぱを出荷するビジネスとしても注目されました。地域の人たちがブランドを“誇れるもの”として主体的に語っている好例です。

③ ストーリーと体験がつながっている

「なぜこの地域で、この活動をしているのか」という背景に、共感できるストーリーがあること。そしてそれを、現地での体験や商品、会話の中で感じ取れること。
語られるストーリーと、リアルな体験にズレがないことが、“共感の連鎖”を生み出します。

  • たとえば、大分県の湯布院では、
    行政や観光協会が一体となり、  「静かに滞在する町」というコンセプトを長期的に共有しています。こうした方針は、由布市の観光基本計画にも明記されており、  町全体で“ストーリーを体現する”動きが続いています。

④ 外部へ向けたPR以上に、地域の中に熱意がある

目を引くビジュアルやSNS戦略よりも、まず大切なのは地域の中の熱量。その熱が、言葉や行動、空気感を通してじわじわと伝わり、外の人を惹きつけます。

  • たとえば、神奈川県真鶴町では、
    町全体で「美の条例」をつくり、景観や建物の調和を住民とともに守っています。暮らしの中にある誇りや意志が、結果としてブランドをつくっているのです。

これらに共通する“強さの理由”とは、
「自分たちの地域の強みや進むべき方向に、みんなが納得し、誇りを持っていること」。
そこに、ブランドの本当の強さが生まれるのです。

5. 地域ブランディングにも「ストーリー」が必要な理由


地域ブランディングにおいて、“何をどう伝えるか”も大事ですが、
それ以上に問われるのは、「なぜそれを伝えるのか?」という背景の物語です。商品のスペックやイベント内容だけでは、人の心は動きません。
どんな想いで、どんな人たちが、どんな風景の中で育んできたのか。
そうしたストーリーがあるからこそ、人は共感し、記憶に残り、ファンになります。

ブランドにおけるストーリーとは、単なる“感動話”ではありません。
誰が、なぜこの取り組みをしているのか──
その背景が伝わることで、ブランドに「人の体温」が加わるのです。

たとえば、「高原トマト」よりも、
「昼夜の寒暖差が激しい地域で、ずっと農家が守り続けてきた味」と聞いた方が、ぐっと惹き込まれませんか?

スペックではなく、背景にある“理由”が伝わること。それがストーリーの役割です。

外向きの発信だけでなく、地域内の人たちが「これが私たちの物語」と語れる状態は、ブランドを何倍も強くします。「らしさ」や「想い」を共通言語として持てると、発信も接客も広報もすべてに一貫性が生まれます。

語れる人が増えるほど、ブランドは「共有財産」として地域に根づいていきます。

ストーリーの役割は、見えにくい価値や想いを“言葉”や“表現”として形にし、誰にでも伝わるものにすることです。

ロゴやSNS、映像、パンフレット──どんな表現であっても、そこに物語の芯が通っていることで、ブランドは共感され、選ばれ、続いていく力を持ちます。

6. インナーブランディング的視点の重要性


地域ブランディングがうまくいくかどうかは、
どれだけカッコいいロゴを作るかでも、どれだけバズる発信をするかでもありません。
いちばんのカギは、その地域の中の人たちが、どれだけ“納得”して動けるかです。
つまり、内側の共感と誇りがあるかどうか。これは企業におけるインナーブランディングと非常によく似ています。

たとえばパンフレットに載っているキャッチコピー。
地元の人が読んで「うちらしくないな」と感じる表現は、外にも伝わりません。
逆に「そうそう、これがうちらの良さなんだよ」と納得できると、そこから自然な一貫性が生まれます。

内側の共感が強いブランドには、4つの要素があります。

「納得している」こと。
価値や方向性に心から共感できる状態です。
「なぜこれをやっているのか」「どこに向かっているのか」が腑に落ちることで、活動への意欲や一体感が自然と生まれます。
「誇りを持っている」こと。
外に伝えたくなる気持ちが自然と湧いてくる状態です。
「自分たちの地域や仕事には、こんな価値がある」と胸を張れるようになると、関わる人の発言や態度にもポジティブな影響が表れます。
「語れるようになっている」こと。
自分の言葉で魅力を語れるようになることです。
単なるスローガンの受け売りではなく、自分の体験や実感をもとに語れる人が増えると、発信には説得力と温度が生まれます。
「共感が広がっている」こと。
内側で育った納得や誇りが、周囲の人々にも自然と伝わっていく状態です。
その共感が、応援や参加などのポジティブな行動を生み出し、ブランドの力をさらに強めていきます。

ポスター1枚の空気感から、スタッフの口調、接客、SNSのトーンに至るまで、
すべてが統一感を持ち、「その地域らしさ」がにじみ出ます。

強いブランドは、演出ではなく“内側の共感と一体感”が外にじわじわ滲み出ているものです。

地域ブランディングもまた、“内側”から育てるものだと私たちは考えています。
誰か一人の発信ではなく、関わる人みんなが少しずつ“同じ物語”を語っていける状態。
そこに、ブランドとしての強さと続く力が宿るのです。

7. ブランドストーリー研究所の地域ブランディング支援


ブランドストーリー研究所では、
地域の魅力を“伝わるカタチ”に育てるお手伝いをしています。

そんなお悩みを抱える地域の方々と一緒に、
資源の棚卸し/言語化/コンセプト設計/表現・発信/チームづくりまでを一貫してサポートしています。

地域の中にある“まだ言葉になっていない魅力”を、
カタチにして、伝わるものへと育てていく。
それが、私たちの役割です。

当社のブランドストーリーづくりは、自己流ではありません。
体系的なブランディングの視点と、(一財)ブランドマネージャー認定協会および (一社)日本ファミリービジネスアドバイザー協会の考え方を参考にし、当社の経験を活かした独自の方法で、企業の価値を物語として形にしています。ご興味を持たれた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

8. 最後に|地域ブランディングは、地域のことを“もっと好きになる”ことから始めよう


最後に、
地域には、まだ言葉になっていない魅力がたくさんあります。
でもそれを、外に向けてただ発信するだけでは、本当のブランドには育ちません。

大切なのは、「自分たちの地域を、自分たちがちゃんと好きでいられること」
ここがいい、こんな人たちがいる、こんな風景がある──
そのことに気づき、誇りを持ち、「伝えたい」と心から思える状態が、ブランドのはじまりです。

伝えることは、内側から始まる。
その実感を、少しずつ地域の中に広げていくことが、
“らしさ”のある、あたたかいブランドを育てていく第一歩なのだと思います。


参考リンク

・小布施町|まちづくりの取り組み

https://www.town.obuse.nagano.jp/town-development/docs/about.html

・徳島県上勝町「いろどり」事例(JNTO地域支援)

https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/casestudy/3329.html

・真鶴町|美の基準とまちづくり

https://www.town.manazuru.kanagawa.jp/soshiki/machizukuri/toshikeikaku/973.html

・新・由布院温泉観光基本計画(由布市 公式 PDF)
https://www.city.yufu.oita.jp/wp-content/uploads/2018/07/sinyufuinonsenkankokihonkeikaku.pdf?utm_source=chatgpt.com

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